紅茶は世界中で愛される飲み物ですが、実は、紅茶は緑茶やウーロン茶と同じお茶の木から作られているのをご存じですか?
この記事では、お茶の木からどのようにして紅茶が作られているのか、その過程をくわしく解説します。この機会にぜひ紅茶の製造プロセスを知ってください。
お茶の木とその特徴
私たちが日常的に楽しむ紅茶や緑茶、ウーロン茶は、ツバキ科の常緑樹、カメリア・シネンシスという同じお茶の木から生まれています。
このお茶の木は、もともと中国の雲南省やチベット山脈の高地に自生していましたが、今ではインド、スリランカ、東南アジア、台湾、中国、日本など世界中で栽培されています。
お茶の木には主に二つの品種があります。山岳地帯に適した中国種は、酸化酵素の活性が低く、緑茶の製造に適しています。
一方、インドのアッサム地方が原産のアッサム種は、熱帯地域でよく育ち、酸化酵素が活発で紅茶やウーロン茶の製造に向いています。
それぞれの品種が持つ独特の特性が、さまざまな種類の茶を生み出す基礎となっています。
中国種の特徴
中国種の葉は厚みがあり、先端には柔らかな丸みがあります。葉肉は薄くて硬く、大きさは一般的に小さめ(約9×4cm)です。
この木は高さ2~3メートルで、幹の近くから枝が多く分かれる様子が特徴です。寒さや乾燥にも強いため、様々な環境での栽培が可能です。タンニン含有量は比較的低いです。
アッサム種の特徴
アッサム種は、葉が薄く先端が尖っていることが特徴です。葉肉は柔らかくて厚みがあり、中国種の約2倍の大きさ(12×4cm以上)です。
樹形は高さが10メートルを超えることもあり、太い幹に枝分かれが少ないのが特徴です。暑く湿度の高い環境を好むため、寒冷地や乾燥地では育ちにくく、タンニン含有量が多いです。
茶の製造方法とその影響
紅茶、緑茶、ウーロン茶は、すべて同じお茶の木から作られますが、その製造方法の違いによって、それぞれの茶の色や味、香りが異なります。
これらは不発酵の緑茶、半発酵のウーロン茶、発酵の紅茶に分類されます。
紅茶は、茶葉を揉んで酸化させることで、リンゴが空気に触れた時のように色が変わり、黒褐色の茶葉になります。
緑茶は茶葉を揉むことは同じでも、すぐに蒸したり、または乾燥させて発酵を防ぎ、緑色の状態を保持します。ウーロン茶は紅茶と緑茶の中間的な処理を施し、途中で発酵を止めます。
なお、紅茶はもともと中国で生産されていたウーロン茶が、イギリスへの輸出過程で発酵が強化され、現在の紅茶の形に発展したと言われています。
お茶の木とその育て方
お茶の木には主に中国種とアッサム種という二つの主要な品種があります。これらのお茶は、製法によって不発酵の緑茶、半発酵のウーロン茶、発酵の紅茶という三つのカテゴリに分類されます。
お茶の木の栽培について
お茶の木は高地での栽培が一般的です。年間降水量が1500mm以上で、適度な乾燥期間があることが成長には重要です。
また、風や霧、日光が茶葉の品質に大きな影響を与え、特に紅茶の風味や香りを形成します。挿し木による増殖が普及しており、これにより品質が均一な木を効率よく育てることができます。
種からの育成方法
お茶の木の種子からの育成方法は次のとおりです。
- 種子の準備:種子を一日水に浸し、沈んだものを選んで植えます。表皮が柔らかくなったら2~3cmの深さに植えます。
- 発芽:植えた後40~50日で発芽し、土から新芽が顔を出します。幼木は直射日光を避けるために覆いをして日光の量を調整します。
- 根の成長:3~4ヵ月後、根がしっかりと育ち、幹を支えるようになります。葉が3~4枚つき、植物は20~30cmほどに成長します。
- 成木への発展:2~3年で1~1.5mの高さに成長し、新芽と若葉が豊富につき、収穫が可能となります。
- 剪定:自然に任せると4~5mまで成長するため、茶摘みが容易な1~1.2mの高さに剪定します。生育開始から2年後に最初の剪定を行い、その後は3~4年ごとに枝を大幅に切り落とし、若返りを図ります。
挿し木による植物の増殖方法
挿し木は、親木から枝を切り取り、それを使って新しい株を育てる方法です。
この技術は、元の植物と同じ遺伝的特性を持つ植物を作ることができるため、特定の品質を保持するのに非常に効果的です。
さらに、挿し木は種から育てる方法に比べて成長が早く、より速く収穫に至ることが可能です。
紅茶の製造プロセス
紅茶を作る過程では、摘み取られた生葉が持つ苦味や独特の青臭さが、製茶工程を経ることで滑らかで深みのある味わいに変わります。
この変化は特にオーソドックス製法とCTC製法によって達成されます。
オーソドックス製法について
オーソドックス製法は、伝統的な手作業と機械を利用した製法を組み合わせた方法です。この製法では、茶葉の個性を活かしながらリーフタイプとブロークンタイプの茶葉を生産します。
インドやスリランカではこの製造プロセスに15~18時間を要します。オーソドックス製法の主な工程は以下の通りです。
1. 摘採:新芽とその下の2枚または3枚の葉を手で丁寧に摘み取ります。最も品質が高いとされる「一芯二葉」が理想的な摘み方ですが、「一芯三葉」は量産に適しています。
2. 萎凋:摘んだ葉を自然にしおれさせ、柔らかくします。
3. 揉捻:葉を揉むことで形を整え、内部の成分を活性化させます。
4. ローターバン:葉をさらにねじって加工し、均一な形に仕上げます。
5. 玉解き・ふるい分け:揉んだ葉をほぐし、サイズに応じて分類します。
6. 酸化発酵:葉を酸化させ、その色と香りを変えます。
7. 乾燥:葉を乾燥させて保存性を高めます。
8. グレード分け:品質に応じて葉を選別し、グレードを決定します。
これらのていねいな工程を経ることで、特定の性質を持つ高品質の紅茶が製造されます。
紅茶のグレード分けとCTC製法の解説
乾燥が完了した茶葉は、まずクリーニング工程で茎や軸、その他の異物を取り除くことから始まります。その後、茶葉を一定のサイズに揃えるため篩分け機を通し、メッシュを通過させることで均一な大きさに分類されます。
これにより、さまざまなグレード、例えばOP(Orange Pekoe)、BOP(Broken Orange Pekoe)、BOPF(Broken Orange Pekoe Fannings)などが設定されます。
次に、オーソドックス製法によるリーフタイプの茶葉を紹介します。
CTC製法について
CTC製法は、茶葉を機械で押しつぶし(Crush)、引き裂き(Tear)、そして丸める(Curl)技術です。
この方法は、茎や軸も含めて茶葉を顆粒状に加工し、生産効率を大幅に向上させます。この製法で作られる紅茶は、抽出が迅速で、濃厚かつ甘みを帯びた渋味が特徴で、ティーバッグに最適です。
CTC製法の工程は以下の通りです。
1. 摘採:新芽とその下の2枚または3枚の葉を手で摘み取ります。
2. 萎凋:水分を約60%~70%に減少させることで、次の加工がスムーズに行われます。
3. ローターバン:萎凋後、茶葉をローターバンでざっくりと切断します。
4. CTC機械:異なる速度で回転するステンレス製のローラーで茶葉を細かく加工し、Crush、Tear、Curlの工程を施します。
5. 酸化発酵:CTC機械から出た茶葉をふるい分けた後、オーソドックス製法と同様に適切な環境下で発酵させます。
これらの一連の工程を経て、CTC製法による紅茶が完成し、世界中の市場に供給されます。
紅茶の乾燥プロセスとグレードの分類方法
発酵が完了した紅茶葉は乾燥機によって約100度の熱風で迅速に乾燥されます。この工程では酸化発酵が停止し、紅茶の品質が最終的に定まります。
グレードの分類
特にCTC製法で作られた紅茶は、1mmから3mmの粒状の形態が一般的ですが、粒の大きさにばらつきがあることもあります。そこで、細かいメッシュを用いた篩分けにより、粒度ごとに細かくグレードを分類します。
CTC製法による紅茶葉は、その小さく丸い粒状の形が特徴です。
紅茶の製造方法について
紅茶を作る主な方法には、オーソドックス製法とCTC製法があります。
オーソドックス製法では、ていねいな手作業と機械を組み合わせて、茶葉の個性を最大限に引き出し、リーフタイプとブロークンタイプの茶葉を生産します。
一方、CTC製法では、茶葉を機械で圧縮し、裂断して丸めることで、均一な顆粒状の製品を大量に生産し、これは主にティーバッグ向けに使用されます。
紅茶の製造では、新芽を主に手で摘み取り、その酸化発酵の管理が紅茶の色や風味に大きく影響を与えますので、このプロセスの管理は非常に重要です。
まとめ
この記事では、お茶の木から始まり、その葉がどのようにして紅茶として完成するかの過程をご紹介しました。
紅茶は、人の手でていねいに摘まれた葉から作られていることに驚いた方もいるかも知れませんね。
紅茶を一杯飲むたびに、その紅茶を世に送り出してくれるたくさんの方々の努力と献身を思い、感謝の気持ちを忘れずにいたいと思います。
これからも、そんな思いを胸に、大切なティータイムを楽しんでいきましょう。